音楽は愛犬と飼い主さんの「楽しいツール」
犬の防災啓蒙やセミナー講師、ホリスティックケアカウンセラーとして活躍する荻野直美さんは、「オトとりっぷ」の開発時に携わったひとり。「オトとりっぷ」は、犬にとっては日常のアクセントとなり、QOLの向上につながるのではと荻野先生は言います。では実際に、犬との生活に音楽をどう使うといいのでしょうか? 音楽は犬の健康や幸せに役立つのでしょうか?
──「犬用の音楽」があることを知ったとき、どんな印象でしたか?
犬に音楽ってどういうこと?」と驚いたと同時に、犬に効果のある音の成分を研究していると知り、犬たちがどんな反応をするのかすごく興味がわきました。
うちにいる2匹のサルーキ、それからスクールの生徒さんやセミナーに参加してくださっている犬の飼い主さんにもお声かけして、実証実験に協力しました。普段からお留守番のある小型犬から大型犬、さまざまな犬種が2年間で200匹くらい協力してくれました。
──最初の実証実験では小型センサーを犬の首輪につけて、スピーカーから「成分を含んだ音楽を30分流した後、30分無音にする」を繰り返し、犬の動きなどの反応を調べました。荻野先生の愛犬たちの反応はどうでしたか?
一番反応していたのは人の語り声です。ある物語の朗読が入っていたんですが、聞こえた瞬間、犬たちはスピーカーの前へ行き聞きいってました。その後、リラックスしはじめたのできらいな音ではないだなぁと。ストレスを感じたり、不安になっている様子はありませんでした。
──荻野先生の愛犬たちには、もともときらいな音はあるのでしょうか?
スピーカーやテレビ、スマホから流れくる音や生活音に関して恐怖はないのですが、外の飛行機の音やカラスの鳴き声、雷などには「ん?」という反応はします。雷がドーンと鳴っているときは、犬たちが怖がらないように、あえて外の音が聞こえないくらいうちの子どもたちに遊んでもらったり、スピーカーの音を大きくして「音を音で消す」ということをしています。
──ドッグトレーナーのレッスンや犬の幼稚園などでも、外の音を室内の音でマスクすることがあるそうですね。
静かな環境だと、小さな音でも犬への刺激になってしまうことがあるからです。子どもがようやく寝たから起こさないように静かにして……なんてしているときに限ってちょっとした物音で起きてしまう、あんなイメージです(笑)。
飼い主さんと犬にとって楽しいツール
──犬用の音楽を流せる「オトとりっぷ」は、犬との暮らしのなかでどんなメリットが考えられますか?
飼い主さんと犬が楽しめるツールとして、すごいアプリですね。「音楽をかけようね」という日常のアクセントが、犬のQOLの向上につながっていくと思います。
みんなが一緒にいる空間に音楽が流れていたり、楽しい場面で音楽が流れていると、犬にとってはトレーニングでいうところの「条件付け」になります。それを学習すると、飼い主さんが外出してもいつもの音楽があることで、犬は安心して過ごせます。「オトとりっぷ」はそのツールになると思います。
犬にとって音楽が「生活空間に癒やしと一緒にあるもの」という感じ。寝るときは慣れ親しんでいて心地の良い自分のお布団がいい、そんな感覚です。
──癒やしのある空間は、犬にいい影響を与えるのでしょうか?
動物の勉強をしていてわかったのですが、生物は生まれつき地球環境の影響を受けるんです。鳥が一斉に飛び立ったり、家族がけんかしていると犬が反応するのは、周りの環境に変化があり犬に伝わるから。だからリラックスしているときにかかっている音楽も動物にもリンクして、いい影響を与えると思います。
犬の健康をトータルで考える
──荻野先生は犬のホリスティックケアのカウンセラーでもありますが、犬のホリスティックケアとは何か教えてください。
ホリスティックケアの概念は、症状や不調の原因をトータルに探り、根本的な治療をすることで健康な状態を取り戻すことを目的としています。人も動物も、体のあらゆるところはつながっていて、不調もつながっていくため、総合的なアプローチが必要。現代療法とアロマテラピーや食事療法、マッサージなどトータルで行うものがホリスティックケアです。
──犬について根本的な原因をみたほうがいいケースは、どんなことがありますか?
犬は怖がっている物事からのストレスで体調不良になることがあるんです。それに対してどうアプローチをしていけば、環境に慣れて落ち着けるかを考えます。トレーニングも同様で、単に一部を見るのではなく、根本的な原因を追求して対処していくんです。
犬にとって玄関のチャイムは怖いことでもあり、驚きますよね。犬たちからすると、テリトリーに知らない人が来る不安もあるので。でもそこで「驚くな」なんて言えません。だから安全なスペースである「ハウス」を教えて、驚いても早く平常心に戻ってねと教えてあげることもホリスティックの考え方です。
──犬はどんなときに不安になることが多いのでしょうか?
雷、飛行機、急な音などが刺激になることは多いですね。人に対しても不安を抱くことはあって、女の人はいいけど男の人が苦手、大人はいいけど子どもは苦手など。お散歩中はほかの犬、猫、自転車やバイク、家の中だと掃除機も。掃除機は不安というより怒っているようなテンションの上がり方で、うれしときとは要素が違います。
分離不安症状を示す場合、飼い主さんの外出中に発生することがあるため、日頃から注意してみてあげる必要があります。
──飼い主さんはどんなケアをしてあげられますか?
犬たちのボディランゲージを見て、不安なときは飼い主さんが寄り添ってあげること。それをわかってもらうことで、犬は自分の体をブルブルッと振り、不安やいやな気持ちを切り替えることができます。そうすると早く平常心に戻りますし、音楽も平常心に戻しやすくするひとつになり得ますね。
犬と共に過ごす音楽を 「オトとりっぷ」の活用法
──「オトとりっぷ」の音楽は、どんな悩みのある犬に使うのがいいでしょうか?
問題解決のために使うのではなく、「いい要素」として使うといいですね。リラックスした空間を「オトとりっぷ」で演出してあげられますし、音楽に対して極端なストレス反応を示さない限りどんな犬にも使えるはずです。犬にとって音楽が“本当にいいもの”になっていくには、繰り返し続けること、条件付け、環境を整えることも必須です。
──愛犬のために環境を整えてあげられれば、外出する飼い主さんも安心ですね。
お留守番をさせるときはいつもの音やいつものベッド、犬のいるスペースにはバスタオルなどで囲って落ち着く空間を作ってあげるといいですね。いろんな要素は必要ですが、そのひとつとして「オトとりっぷ」は大活躍してくれると思います。
アロマもそうですが「オトとりっぷ」も、犬だけ、飼い主だけ、ではなく一緒に楽しめるのが魅力です。お留守番のときだけでというより、一緒に楽しもうねっというツールとして使ってみてほしいです。
●プロフィール
荻野直美(おぎの・なおみ)
D-HAB代表、一般社団法人わんにゃん防災 共同代表理事。防災士、愛玩動物飼養管理士、アロマテラピーアドバイザーの資格を持ち、ペットセミナー講師やホリスティックケアのカウンセラーとして活躍する。
D-HAB(https://www.d-hab2015.com/ )
わんにゃん防災(https://www.wannyanbousai.com/)
その他のインタビュー
犬も音楽は好き。リラックスできるテーマ曲を見つけて。
獣医師
平松育子先生
Copyright © MEC Co., Ltd. All Rights reserved.